• 2020-09-15

絵解き|POWER10プロセッサ ~IBM開発者のプレゼン資料から理解する◎後編

 3種類の高速インターフェース

本稿の前編で、POWER10には「オープンメモリインターフェース(OMI)」「PowerAXONインターフェース」「PCIe Gen5インターフェース」という3種類の高速インターフェースがあることに触れました。

OMIは、システムのメインメモリやストレージ・クラス・メモリ(SCM)、GDDRインターフェースのDIMMモジュールとの接続が想定されています(下図の右部分)。

オープンメモリインターフェース(OMI)による接続


一方、PowerAXONメモリインターフェースのほうは、複数ソケットをつなぐSMP(同期マルチプロセッシング)接続や、POWER10ベースのシステム間で共有可能なメモリプールを作ることができる「メモリインセプション(Memory Inception)での利用が想定されています。

メモリインセプションはPOWER10で搭載された新技術で、この技術によりペタバイト級のメモリクラスタの利用が可能になります。メモリー集約型の、たとえば推論処理を行うAIアプリケーションに向くと、IBMでは説明しています(下図の左部分)。

PowerAXONメモリインターフェース


3番目のPCIe Gen5インターフェースは、PCIe Gen5を備える外部機器とのインターコネクトでの利用が想定されています。PCIe Gen5インターフェースは、最大32 GT/s(Transfer/秒)=1TB/秒のデータレートを実現する高速インターフェースです(下図)。

PCIe Gen5インターフェース


このほか、CPUをGPU、ASIC、FPGA、高速ストレージなどの外部アクセラレータに直接接続するための高速プロセッサ拡張バス標準であるOpenCAPIも搭載しています(下図)。

OpenCAPI


 PowerVM上にKVMをネストで搭載

POWER10は、搭載する仮想化技術PowerVM上で、IBM i、AIX、Linuxを稼働させることができます。

今回のPOWER10で注目されるのは、そのPowerVM上にKVM(Kernel-based Virtual Machine )をネストの形で配置したという点です。これにより、KVM環境でRed HatのOpenShiftを稼働させることができ、DockerとKubernetesを利用することが可能になります。

OpenShiftは、IBMがマルチクラウド戦略の中核に置く製品です。今回のPOWER10へのKVMの適用により、POWERプロセッサ上でOpenShiftを軸とするマルチクラウドを推進する基盤が整ったと言えるでしょう(下図)。

KVM搭載によりOpenShiftの利用が可能に


下のグラフは、POWER9とPOWER10のパフォーマンス比較です。インテジャー演算で3倍以上、エンタープライズ演算と浮動小数点演算で3倍を示しています。

POWER10のパフォーマンス


POWER10は、AIアプリケーションの処理に強いことをアピールポイントにしています。

POWER9(ソケット水準)との比較では、Linpackベンチマーク(浮動小数点演算)とFP32でそれぞれ10倍、BFloat16で15倍以上、INT8で20倍以上の高速処理を記録しています。

POWER9とのAI処理のパフォーマンス比較


(前編はこちら

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