• 2020-08-31

レガシーシステムに関する10の誤った先入観|後編 ~IBM iは近い将来、なくなってしまう?

 1 レガシーシステムはDXに適応できない

間違っています。これは現状システムを進化させなかった場合や、閉鎖された世界に閉じ込めたままで、他の業界から切り離された場合には当てはまりますが、実際にはそうではありません。私たちは毎日、Webやスマートデバイスを使って、レガシーシステムに接続されたサービスを利用しています。

たとえば典型的な例が、銀行のサービスです。クラウドを経由してレガシーシステムを提供するために、数多くのWebインターフェースやWebサービスが開発されています。レガシーシステムはセキュリティ、信頼性、スケーラビリティなど、その強みを最大限に活かしつつ、DX戦略の重要な一翼を担っています。

 2 レガシーシステムの継続性はメーカーによって保証されていない

間違っています。「IBMはまもなくIBM iの販売を中止する」「IBM iは近い将来、なくなってしまう」という悲観的な観測を一度は耳にしたことがあるでしょう。

しかしこうしたIBMのプラットフォームは、今日でも世界のビジネストランザクションの約70%を実行しているので、IBMがすぐにこれらのシステムを放棄することはありません。IBM iは今も定期的にバージョンアップを続けており、今後に向けた包括的なロードマップが発表されています。

しかし、それ以上にIBM iの販売が継続する大きな根拠は、レガシーシステムがIBMにとって重要な収入源であり続けるという事実です。そしてそこに、IBM iの強力で、安定的、かつ忠実なカスタマーベースが加わります。これら2つの要素は、「レガシーシステムの継続性はメーカーによって保証されていない」という憶測を完全に打ち消すには十分です。

 3  レガシーシステムのTCOは非常に高い

本当でもあり、間違ってもいます。これはIBM のメインフレームのような世界で、当てはまるケースがあるかもしれません。ただし、IBM iについては完全に誤りです。

OSとデータベースを完全統合した独自のアーキテクチャを基本とするIBM iは、オープン系と比べてきわめて高い運用管理性を備えるのが特徴で、TCOに優れています。それはIBM iユーザーであれば、誰でも理解しています。その高度な運用管理性ゆえに、IBM iユーザーではIT担当者が1名だけであったり、ほかの業務と兼務しているケースが多く見られます。

 4 レガシーシステムはクラウドと互換性がない

間違っています。Power Systemsを利用できるパブリッククラウド型サービスが少なかったせいで、そのような印象を受けるのかもしれません。

しかし現在、米国ではIBM、Skytap、Googleの3社がPower Systems(IBM i、AIX、Linux)を利用できるクラウドサービスを開始しています。日本でも日本情報通信やIIJなどが同様のクラウドサービスを提供しています。

クラウドへの動きはさらに活発になるでしょう。レガシーシステムを運用している企業が、クラウドサービスへ移行するのを妨げる理由は何もありません。

 5 経験豊かなIT人材が減少している

本当でもあり、間違ってもいます。経験豊富な人材の獲得が難しくなっているのは事実です。長くシステムに携わった熟練の技術者が退職の時期を迎え、今後の運用保守に頭を悩ませている企業も少なくありません。この問題は、時間の経過とともに自然に解決されるわけではありません。

しかしこれは、既存システムを捨てる理由にはなりません。若い開発者を育てることはできるし、既存のチームが働き方を変えられるように導くことは可能だからです。それは、次に説明しましょう。

 6 若い世代はレガシーシステムを嫌う

それは明らかに間違った先入観です。若い世代にレガシーシステムを教育した多くの人が、「決してそんなことはない。彼らがレガシーシステムを嫌うことはないし、むしろ積極的な姿勢を見せる」と言います。若い世代の開発者は総じて新しい開発技術に詳しく、COBOL、RPG、Java、Python、.Netなど複数の言語を使いこなします。1つの言語を習得してから、次の言語を覚えるのにあまり苦労しません。

ただし、開発環境の選び方はとても重要で、ソースコードを管理するGitなど、開発者がすでに使い慣れているツールをベースにする必要があります。若い世代の才能を開花させるには、できるだけ制約の少ない環境で、高品質のコードを迅速に作成できるよう、新しい種類のツールを利用できる環境を整える必要があります。

 7 既存の技術者たちが新しい働き方に移行するのは不可能である

間違っています。多少の難しさはありますし、少し時間がかかるかもしれませんが、不可能ではありません。

DXのプロジェクトから、レガシーシステム担当の技術者を除外するような動きがよく見られます。担当者がバックログで手一杯だから、レガシーシステムは安定化しているから、多くが自動化されているから、などが理由とされます。

このことは技術者にフラストレーションを生む原因になり、部門のサイロ化を招きます。間違いなく、企業全体の効率化を妨げます。レガシーな側面は、インフラ、アーキテクチャ、ツール、セキュリティなど何であれ、戦略的な意思決定プロセスに体系的に組み込まれています。レガシーシステムは、企業のIT戦略を迅速かつ柔軟に変化させていく、そのスピードを妨げる存在では決してありません。

 8 レガシーシステムのモノリシックアーキテクチャは進化を妨げる

本当です。スパゲッティの皿を想像してみてください。そうです、1本のスパゲティを引っ張りだすと、全部がフォークに絡まってくるようなスパゲティコードです。プログラム資産の保守性をできるだけ容易にするには、モジュール化が必要です。

しかし、こうした手法は20~30年前にはまだ標準ではありませんでした。モノリシックなアーキテクチャでは、開発チームが並行開発するのは困難です。ここから抜け出す唯一の方法は、新しいアーキテクチャ標準を定義し、アプリケーションを段階的に変換することです(それまでは、レガシーシステムの変更を最小限に抑える必要があります。もし可能であれば、ですが)。

 9 「巨大なモノリス」にわざわざ手を入れない

本当です。こうした基幹アプリケーションの重要性とその複雑さ、大きなリスクを考えると、システム責任者やCIOはプログラムの変更に消極的です。唯一の解決策は、「ツールアップ」することです。ソースコードを理解しやすくするような作業はすべて、ルーチン化する必要があります。自動化による時間の節約はとくに重要です。

コードの品質とベストプラクティスによるコンプライアンスをモニターする最新のツールカテゴリがますます重視されています。さらに現在では、新しいソースコード分析ツールは、特定のコードエラーやプログラムミスをチェックするだけではなく、品質とセキュリティの両面で価値を提供できます。

 10 レガシーシステムはもはやユーザーのニーズを満たしていない

これはしばしば本当ですが、それは主に長年にわたる戦略性の欠如が理由です。これらのシステムは遅かれ早かれリプレースされると考えていたため、適切な投資を怠り、陳腐化を許してしまった結果です。こうしたシステムに継続的に投資していた場合、時代遅れとは呼ばれなかったでしょう。機能的および技術的にレガシー資産を強化すると決定した企業は、競争相手よりはるかに強い優位性の確立に成功しています。

 *以下、前編に戻ります。
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