• 2020-08-30

事例|共英製鋼株式会社
ハイブリッド型DCへの移行とLaserVault Backup導入により、新しいデータ保全環境を整備


 テープバックアップに伴う運用コストと負荷が課題

鉄筋コンクリート用棒鋼で国内シェアNo.1を誇る共英製鋼は、昨年の大晦日と今年元旦の2日間を使って基幹サーバーを新しいデータセンターへ移設し、新たなデータ保全の基盤を整備した。運用負荷とコストの軽減、および今後のデータ保全の強化も視野に入れた移行で、IBM iの“次世代のデータバックアップ”を検討するユーザーにとって示唆に富む取り組みである。

共英製鋼は、国内は名古屋、枚方(大阪)、山口、茨城(100%子会社の関東スチール)の4カ所に、海外はベトナムの2カ所に製造拠点をもつ大手鋼材・鉄鋼製品メーカーである。昨年(2016年)12月には、米テキサス州にある鉄鋼製品メーカーBD Vinton LLC社を買収し、北米における製造・販売拠点も手中にした。海外鉄鋼事業の推進は、環境リサイクル事業の拡大と並ぶ同社の中期経営計画の柱である。

同社のシステムはこれまで、生産系は事業所ごとにオープン系技術を用いて構築・運用し、販売管理・営業支援・財務会計・給与などの基幹系は全社共通としてIBMミッドレンジサーバー上で構築・運用してきた。

IBMミッドレンジサーバーの採用は1980年代のAS/400からiSeries、IBM iへと基幹システムを乗せ換え、2007年ごろからはIBM iを他社データセンターへ移設(ハウジング)して運用を続けてきた。

基幹データの日次バックアップは、従来テープ装置への保管作業で、そのテープメディア交換作業の一部をデータセンターの運用サービスを利用して行ってきた。

「しかし、その一部のテープ交換作業でも運用費用がかかり、それらを何とか削減できないかと考えていました。そこで、IBM iの更改に合わせて採用したのが、今回の一連の取り組みです」と説明するのは、情報システム部ITインフラ課長の都善典氏である。

従来の日次バックアップは、7つのLPAR区画をもつIBM iに3台のテープ装置を接続して行っていた。LPARの各区画には、全社基幹システム、名古屋・枚方・山口の各事業所の業務系システム、および関東スチールの各種システムなどが割り当てられ、各区画の業務終了後に自動でバックアップを取るシステムであった。テープは、データセンター内に一定期間保管し、データの保全を図っていた。

都善典 様 情報システム部 ITインフラ課長

 ハイブリッド型データセンター「NEC神戸データセンター」へ移設

新しく採用したのは、IBM iからPCサーバーへバックアップを行えるツールと、ハウジング環境のPCサーバーへバックアップしたデータを、隣接するクラウド上のディスク(サーバー)に転送できるデータセンター環境である。

つまり、ハウジングとクラウドの両方の環境を備えるハイブリッド型データセンターの採用が今回の1つのポイントで、同社は最終的にNECが2016年4月にオープンした「NEC神戸データセンター」(兵庫県)へのIBM iの移設(ハウジング)を決めた。同センターは、NECが「西日本のフラグシップ」と位置づけるデータセンターで、ハウジングとクラウドの両方の環境を備える。東日本のフラグシップであるNEC神奈川データセンターのサーバーへは、「クラウドサービスの契約だけで」(都氏)、データの転送と保管を簡便に行うことができる。

共立製鋼のシステム概要


共英製鋼からすると、同じハウジング施設中のPCサーバーへバックアップしたデータを、同じデータセンター内のクラウド設備へ転送・保管でき、さらに東日本のデータセンターのクラウド設備上へも転送・保管できるというデータ保全の基盤を得ることが可能になる(図表)。

「ハウジングのみのデータセンターから遠隔地のクラウドセンターへデータを転送しようとすると、キャリア回線の手配などが必要になり、コストと手間がかかります。ハイブリッド型のデータセンターならそれらを一挙に解決でき、クラウドセンター間のデータ連携サービスなどの利用によって、多様なデータ保全システムの構築が可能です」(都氏)

ただし現在は、同じハウジング施設中のPCサーバーへのバックアップのみの採用で、クラウド設備への転送・保管は「コストの検討などを含めた今後の課題」と、都氏は語る。

 PCサーバーへバックアップするLaserVault Backupを採用

そして、今回導入したシステムのもう1つのポイントが、IBM iからPCサーバーへディスクtoディスクのバックアップが行える「LaserVault Backup」の採用である。

LaserVault Backupは、高機能な世代管理やデータの圧縮・暗号化、複数区画からの並行バックアップやリモートサーバーへのデータ転送機能などを備え、コマンドでバックアップやリストアを遠隔操作できる。「リストア作業のために、データセンターの運用サービスを利用するテープセットの依頼作業がなく、作業の効率化とデータセンターの運用サービス費用の削減ができました」と都氏は話す。

LaserVault Backupの利用で「戸惑った点」として都氏は、「LaserVault Backupの保管コマンドと、IBM iでの保管コマンドの設定方法が違っている点。当社はこれまでオブジェクト単位でリストアを行ってきたため、1つのオブジェクト保管コマンドで対象の複数ライブラリを設定していました、LaserVault Backupのオブジェクト保管コマンドでは1つのコマンド設定内に複数のライブラリを設定できず、対象ライブラリ単位ごとにコマンドを記載設定する点に少々戸惑いましたが、大きな負担にはなっていません」と感想を述べる。

将来的には、IBM iからクラウド上のPCサーバー(ディスク)へのダイレクトバックアップや、オンプレミスのファイルサーバーなどのハウジングまたはクラウドへの移行も検討課題になる、と都氏。新しいツールと基盤を得て、同社のデータ保全は今後さらに強化されていきそうだ。

 

本記事はi Magazine 2017年 Springに掲載されたものです]

 

 

COMPANY PROFILE

本社:大阪市北区
設立:1947年
資本金:185億1600万円
売上高:1610億円(連結、2016年3月)、930億円(単体、同)
従業員数:715名(2016年3月)
事業内容:日本および海外(ベトナム、北米)における各種鋼材・鉄鋼製品の製造・販売事業、環境リサイクル事業などを展開。連結子会社9社をもつ
http://www.kyoeisteel.co.jp/

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